Track89

    ノスタルジックが大好きな平成ブロガーの散文

あと30分でカフェ難民。

カフェって良いですよね。
家に居たらもう根っこでも生えてんじゃねえかってくらい動かない僕は、インスタントコーヒーすら淹れるのが億劫なのですが、カフェだと頼んだら勝手に出てくるし。
なにより、あの家よりは落ち着かないんだけど、その分作業や読書に集中出来る感じと言うか。
でもやっぱり学校や会社とかとは違う一人だけど一人じゃないほっとする感じ。
お洒落なジャズが流れる店内で、優雅にコーヒーの香りを楽しみながら、カタカタとキーボードを打つ時間。
ああ、憧れる。

 

因みに僕の住む街はそらもう石を投げればカフェに当たるくらいカフェがありまして。
古い街だからか、チェーン店よりも個人経営のカフェが多い。
じいさんばあさんがやっている昭和から続いているような渋いカフェもあれば、若い人がやっている"今どき"のカフェもあったりで結構バラエティに富んでいます。
よっしゃ僕も行きつけのカフェみつけて、お洒落な奴らの仲間入りや!
なんて具合に自分に合うカフェを探したのですが、まあなんか上手くいかない。

この街に越してきたのは3年前。
田舎者の僕は喜び勇んで、個人経営のカフェやらバーやらに時間を見つけては突撃したのだけれど、どうにもどこも落ち着かない。
やっぱりというかなんというか。
そういうドラマにも出てきそうなカフェっていうのは得てして先住民とも言うべき常連さん達が既に居て、一種独特の空気になっていたり。

例えば、老舗と言われているカフェ。
まず入口に「ケータイとパソコン禁止」と張り紙がしてある。
ログハウスのような店内には三々五々お爺さんか礼儀正しそうな服を着た大学生が座っていて、皆黙ってコーヒーを啜っている。
そんなコーヒー至上主義者たちの集まるカフェに、「やはりコーヒーはBOSSですな」なんてのたまう僕が入ったら恐らく焙煎されるだろう。

例えば、最近出来たばかりの若い女の店長さんがやっているカフェ。
白を基調とした店内には可愛らしいソファとかがあって、これまた可愛らしい看板娘のポメラニアンが居る。
電源もWifiもあってブログの記事を書くにはうってつけだけれど、夕方を過ぎるとそこは女子大生、女子高生の巣窟となる。
想像してほしい。
退屈な授業を終えて、やっときた楽しい放課後。
「あの新しいカフェ行こうよ! ポメラニアンが居るとこ!」
「行こう行こう!」
なんて、女子大生達がきゃっきゃしながら絵本に出てきそうなメルヘンな木のドアを開けると、そこにはポメラニアンに吠えられている野良犬みたいなアラサーの男(僕)が居るのである。
ちょっとした悲劇だ。


そりゃ中には人当たりの良いおばあさんがやっている、入りやすいカフェなんかもあったのだけれど、そこは店長さんの人柄もあるのか、まあ賑やかなマダムたちの巣窟である。
なんとか端の方の席を確保してぽちぽちキーボードを打っていると、否応が無くマダム達の会話が耳に入ってくる。
「どこどこの家の旦那さんが不倫したらしいわよ」
「やーねー。だからいつも奥さんの怒鳴り声が聞こえてくるのかしら」
「子供もいつも泣いててかわいそうねえ」
それたぶん僕の近所の家だー!!
知りたくなかったー!!
気になって、ブログ書いてる場合じゃねー!!

 

ってな具合で、色んな気になるカフェは数あれど。
どうにもしっくりするところが見つけられない。

とはいえ、家で一人でぽちぽちキーボードを打つのも寂しい。ってか集中できない。主にスプラトゥーンのせいで。
とはいえ、チェーン店に入るのもなんか気が引ける。せっかくこんな街に住んでるのに負けた気がする。
おお神よ。カフェでお洒落に作業したい我を救いたまえ。


そんなわけで安住の地を見つけられず、カフェ難民になりかけていたのですが、ついに自分とぴったり合う場所を発見。
それが「地元にしか展開していない小規模チェーン店」
いや、結局チェーン店やん、と思われるかもしれませんが、これが普通のチェーン店とはちょっと違う。
確かに内装は普通のチェーン店に毛が生えた程度ですが、他のチェーン店ほど、画一的な感じでもない。
かと言って、個人経営のカフェ程、近しい空気感、ないし独特の雰囲気はない。でもチェーン店ほど離れてない。
この絶妙な距離感が素晴らしい。
ここだ!
チェーン店がゲシュタルト崩壊してきた!


やっと安住の地を見つけ、それからというもの週5レベルで通う毎日。
いや本当第2の家と言っても過言ではないほど通い詰めてる。
少し真面目な話をすると、休職中の僕にとってはこういう"外で作業できる環境"というものが結構重要だったりする。
リハビリというと大げさかもしれないけれど、他の人も居る中で黙々と作業が出来る環境。
静けさで言えば(たまに聞こえてくる近所の喧嘩の声を除けば)そりゃ家の方が静かだけれど、ある程度の雑音、というか"丁度良い緩い緊張感"の中で作業するというのは、凄く心地が良いし集中出来る。
ブログを書くのに飽きたら、読書をしたり、カフェオレを飲みながら自分の人生について思いを馳せることも出来る。
ああ、そうか。僕にはこんな時間と空間が必要だったんだ。
野良犬みたいな僕でもどや顔で"なんか出来る人"ぽく見える約束の地だ。
ポメラニアンにも吠えられないし。

なんて、まるでホットカフェオレの様な温かな優しい気持ちで、生まれて初めて神様に感謝しかかっていたのですが。
先日、このカフェの閉店が決まりました。
神様情け容赦なしかよ。
こちとらまたカフェ難民だよ。

 

因みに、閉店の日は1月31日。
つまり今日。
せめて最後にお洒落カフェ野郎になってやろうと思い、ぽちぽちこの記事をそのカフェで書いてます。
カフェが多い街、ということはその分競争率も激しいのか、ここ以外にも何店か閉店しているのを見かけたり。
前にたまたま通りかかった、閉店間際の個人経営のカフェはなんか常連さんが店員さんに花束渡してて凄いアットホームだったり。でも、あの人たちも次の日からはカフェ難民になるのかな、と思ったり。
ここまで書いて、もうこの店の"店じまい"まであと30分ほど。
当然、小規模でもチェーン店だから花束渡したりとか、ドラマチックな感じは全然ないけれど。
ちょっと前に、飲み終わったカップをさげに来た店員さんが「今までありがとうございました」と笑ってくれました。
他のお客さんにも一人ずつ周っているみたい。
結局、常連にはなれなかったし、明日からまたカフェ難民だけど。
もう少ししたら「ごちそうさまでした」と言って出ようかと思います。

 

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散文でした。